「取得」のときは、「来年3月15日までの『引渡し』は大丈夫か?」をチェック- 住宅資金贈与の非課税規定(その②)

はじめに

当初作成7月25日のブログにおいて、注文住宅などの「新築」のときは、

①贈与年の翌年3月15日において、

②「屋根(その骨組みを含みます)を有し、土地に定着した 建造物として認められる時以後の状態にある」、つまり、“棟上げ”以降の状態にあるならば、

③(国税庁は)例外的に、これも「新築」に含めて、

④年末までの入居が確実と見込まれることを前提に、一定の書類を贈与税確定申告書に添付することにより、

⑤「住宅取得資金等の贈与税の非課税」は 適用される、
旨、書きました。

それでは、分譲マンションや建売住宅などの「取得」のときは、どのような取り扱いになるのでしょうか?

例えば、この制度を念頭に置いた祖父からの贈与資金もベースに、
①分譲マンションあるいは建売住宅の購入契約を締結(一部、代り金をお支払い)、

②しかし、何らかの要因により工事に遅れが生じ、贈与年の翌年3月15日において、まだ建築中…
の場合も、上記「新築」のときと同様な例外規定が存在し、この非課税特例の適用はOKなのでしょうか?

2022年2月11日 注記
・このブログに記している「引渡し」の期限(贈与を受けた年の翌年3月15日)などについて、国税庁は、新型コロナウイルス感染症拡大による工期延長の可能性などを考慮し「一定の書類を追加で提出することを要件に、1年延長する」旨の取り扱いを周知しています。
・こちらのブログに記していますので、あわせご参照ください ⇒ 新型コロナの影響で工事完了などが「3月15日」を過ぎそうときも対応法がある ー 住宅資金贈与の非課税規定(その⑤)

贈与年の翌年3月15日までの引渡しが、絶対的な必要条件!

結論を記します。

建売住宅や分譲マンションの「取得」については、「新築」のときのような例外規定は、設けられていません。

贈与翌年の3月15日までに、工事が完成、「引渡し」が完了していることが絶対的な必要条件になります。

今年5月に国税庁が作成したリーフレット「『住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税』等のあらまし」を見ましょう。以下のように赤字で注記されています。

「取得」の場合には、"屋根(その骨組みを含みます。)を有し、土地に定着した 建造物として認められる時以後"の状態にあるものが含まれませんので、贈与を受けた住宅取得等のための金銭を建売住宅又は分譲マンションの取得の対価に充てている場合であっても、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその引渡しを受けていなければ、この制度の適用を受けることはできません。

出所:上記リーフレットのP.5の、 ”1.(1)新築又は取得の場合の要件” の注(3)を一部編集。

「新築」と「取得」では、取り扱いに明解な違いがあります。

ちなみに、この今年5月に作成の「あらまし」は、私が調べたところ、今春、平成28年以来の5年ぶりの改訂。
その平成28年版にも、同様のことが記されていましたが、黒字記載でした。

5年ぶりの改訂にて、この箇所の注記が赤字に変わったことは、
上記の違いを認識されない納税者が多い、あるいは、増えていることを反映しているのでは…と推定します。

前回の記事でも書きましたが、「この非課税の特例を受けよう!」と資金計画を立てられた後に、「実は使えない…」となれば、ダメージは深刻です。

8月に入りました。
分譲マンション等の「取得」について、これから、この特例の適用をご検討される方は、「引渡し」時期を今一度ご確認ください。

翌年3月15日までに、住み始めることができないときは?

翌年3月15日までの「引渡し」は確実。

しかし、「仕事、あるいは、子どもの保育園や学校の関係から、同年3月15日までに、住み始めることができないかも…」は、あり得ますよね。

ご安心ください。

このような場合は、「同年3月15日以降遅滞なく住むことが確実である」と見込まれれば、この特例は適用されます。
ただし、同年12月31日までお住いになられていないときは、適用されません(修正申告が必要)。

次は、手続き面での留意事項です。

このように贈与年の3月15日までに居住開始できないときは、本特例にかかる通常の贈与税確定申告に必要な書類以外に、以下を記した「確約書」(※)の提出が必要となります。

・直ちに居住の用に供することができない理由、
・居住の用に供する予定時期、
・取得等した住宅用家屋を遅滞なく居住の用に供することを約する旨、

※ こちらが、記載例つきの様式(国税庁HPより)です。

まとめ 

建売住宅や分譲マンションは、贈与年の翌年3月15日までに、その引渡しがなければ「住宅用家屋の『取得』」に該当しません

したがって、「住宅取得等資金の贈与税の非課税」は適用されません

例えば、

本年10月 マンション購入契約締結 → 同11月贈与 → 来年3月20日(ex.15日より5日の遅れ)の引渡し

では、残念ながら適用NGです。

「引渡し日」は いつになるのか、慎重に見極められることをお勧めします。

なお、「引渡しが来年3月16日以降になることが確実視されるときは、贈与のタイミング自体を年明け以降にズラせば、いいのでは…」と思いつかれる方がおられるかもしれません。

ただ、この「住宅取得資金等の贈与税の非課税」の適用期限は、法律(租税特別措置法70の2)により令和3年12月31日と定められています。
つまり、同日までの贈与の実行が、特例を受ける出発点なのです。

もちろん、この法律自体が、令和4年度税制改正にて、期間延長される可能性はあります(個人的には、その確率は高いと思料)。
ただ、それは、現時点では未来のこと。
また、仮に延長されても、非課税限度額等が変わることは考えられます。

【2022年9月記】令和4年度税制改正を受け、この特例の適用期限は2年間(2022年1月1日~2023年12月31日)延長されました。しかし、2022年(令和4年)1月1日以降の住宅取得等資金贈与にかかる非課税限度額は、①省エネ住宅等の良質な住宅‥1,000万円、そのほかの住宅‥500万円に変わる等しています。

ご留意ください。

以上