「増改築」は、「増加築前からの所有」と「増改築前からの居住」が 大前提 ~住宅資金贈与の非課税規定(その⑤)

祖父母や父母から、直系の次世代以下の血族に対しての、住宅用家屋の新築等の対価に充てるための資金贈与にかかる非課税規定については、その住宅用家屋の建築などのパターンにより、以下の3つに分かれます。
・「新築(含む、建築後使用されていない建売住宅等の取得)」
・「取得」
・「増改築」

法令ベースでも、
・「新築」は、文字通り、
・また、「取得」も、既存の住宅用家屋、つまり、中古物件の取得を意味する、
と捉えて、差し支えありません。

が、これに対し、「住宅用家屋の『増改築』」は、文字面からだけでは読み取れない落とし穴があります。
われわれがイメージするものと比較し、法令が認めている範囲は、狭いです。

本日は、この点を中心に記します。
※「新築」および「取得」のときの留意点、ならびに、この非課税規定の概要については、以下のブログをご参照ください。

「新築」のときは、「来年3月15日までに、棟上げできるか?」をチェック- 住宅資金贈与の非課税規定(その①)
・「取得」のときは、「来年3月15日までの『引渡し』は大丈夫か?」をチェック- 住宅資金贈与の非課税規定(その②)

「増改築前からの所有」と「増改築前からの居住」の双方を満たすことが、大前提

法令ベースの記載内容は省きますが、この非課税規定の対象となる増改築工事は、父母や祖父などからの資金贈与を受けた本人が、

所有し

かつ

居住している家屋

に対するものに限られます。

したがって、以下のような増改築では、本特例は適用されません。

問題となるケース(その1):贈与を受けた人が、家屋の持ち分を持っていない

例えば、ご夫婦がお住いの家屋で、そのご主人、あるいは、奥様の一方だけが、家屋の持ち分を有しておられるケースを考えてみましょう。

このとき、持ち分を持たれていない相手方、つまり、奥様、あるいは、ご主人が、その父母や祖父母から資金贈与を受け、増改築工事をされたとします。

この場合、贈与を受けた方は、贈与の時点で、家屋を所有していませんね。

したがって、この特例の適用は認められません。

なお、逆に言いますと、この方が、ごく一部でも、家屋の持ち分を持っていると、この”所有”の要件はクリアーすることになります。

問題となるケース(その2):贈与を受けた人が、増改築を行う家屋に住んでいない

増改築前には住んでいなかった家屋(別荘や、セカンドハウスなど)の増改築についても、この非課税規定は適用されません。

つまり、「増改築の前は、住んでいない。が、増改後は、その家屋に住む」では、ダメなのです。

また、増改築前の居住の有無については、「実態として、住んでいたこと」がポイントになります。市区町村に対する住民登録は、あくまで、参考情報です。ご注意ください。

なお、既存の住宅用家屋(中古物件)の「取得」の対価にかかる、直系尊属からの資金贈与については、当然のことながら、「取得」後に「その家屋に、定められれた期限までに住む」ことがチェック・ポイントになります。

この「取得」のケースと比べますと、「増改築」にかかる規定は、きびしい印象を受けます。
(実際、ご相談を受けた納税者の方(複数)から、「えー! そうなのですか?」とのレスポンスをいただいたことがあります。)

ただ、法令には、「対象となる増改築は、居住している家屋に対して行ったもの」と明記されているため、認められません。

そのほかの、増改築工事についての要件

以下のすべてを満たすことが必要です。

  • 施工会社が、贈与を受けた人の配偶者や親族などの“身内”に該当しないこと、
  • 日本国内で行われる工事であること、
  • 工事に要した費用の総額は100万円以上であり、かつ、その費用の2分の1以上が居住の用に供される部分の工事に要したものであること、
  • 家屋の登記簿上の床面積(区分所有建物の場合は、その専有部分)が、40㎡以上240㎡以下、かつ、その2分の1以上が居住の用に供されること、など。

むすび

本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
贈与税(暦年課税)の税率は高いです。

そのため、増改築のケースで、ご両親やご祖父母からの贈与・資金援助をお考えのときは、
・対象の家屋について、持ち分を有しているか、
・現在、お住まいになられている家屋に対する工事であるか、
を、いま一度、ご確認ください。

以上