「新築」のときは、「来年3月15日までに、棟上げできるか?」をチェック- 住宅資金贈与の非課税規定(その①)

はじめに

会社員を辞めた直後の今年3月、東京国税局の確定申告電話相談員に従事しました。

その際、お問い合わせの多かった一つが「住宅取得等資金等の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」。

父母や祖父母から住宅の「新築」あるいは「取得」等のための資金の贈与を受ける場合、一定の条件をみたすと、下表の限度額まで贈与税が非課税となります。

※ 住宅用家屋の新築等にかかる消費税率が10%の場合(それ以外の場合は、それぞれから一定額を減じる額となる)

住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日省エネ等住宅左記以外の住宅
平成31年4月1日から令和2年3月31日まで3,000万円2,500万円
令和2年4月1日から令和3年12月31日まで 1,500万円1,000万円

新聞のマネープラン欄などにしばしば掲載されることから、概要をご存知の方も多いでしょう。

特に、贈与者(父母、あるいは、祖父母)が、贈与後にお亡くなりになられたとしても、本特例により非課税とされた金額は相続財産に足し戻す必要はありません。かねてより、「使い勝手の良い、相続対策の一つ」とされています。

こうしたことから、令和3年末までの工事契約の締結を念頭に、
・この特例利用をご検討中の方、
・もしくは、適用できないか詳しく調べてみよう、
などお考えの方も少なくないと思います。

ただし、この特例制度の適用を受けるためには、いくつかの注意点があります。

殊に、「居住時期」に関する要件については、住宅用家屋の「新築」(ex. 注文住宅)と「取得」(ex. 建売住宅やマンションの購入)とでは、取り扱いが異ります。

そして、それぞれ、ハウスメーカーやマンション開発会社側の工事進捗状況が「令和3年度の確定申告で、本特例が適用できるか? 否か?」へ影響を及ぼします。

来年の確定申告期限(令和4年3月15日)まで、8カ月をきった今、本日は、先ず、「新築」(注文住宅)のケースに着目して解説します。

2022年2月11日 注記
・このブログに記している「新築工事(「棟上げ」の状態を含めて)」の期限(贈与を受けた年の翌年3月15日)などについて、国税庁は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による工期延長の可能性などを考慮し「一定の書類を追加で提出することを要件に、1年延長する」旨の取り扱いを周知しています。
・こちらのブログに記していますので、あわせご参照ください ⇒ 新型コロナの影響で工事完了などが「3月15日」を過ぎそうときも対応法がある ー 住宅資金贈与の非課税規定(その⑤)

上棟日の屋内の様子


住宅資金等資金の贈与税の非課税」規定 -「新築」ケースを中心に-

本制度の概要

「居住時期」にかかる要件以外の、本制度の概要は、下表をご参照ください(別の機会に、そのほかの留意点などを掘り下げます)。

適用できる人以下をみたす、子や孫などの直系卑属
・贈与年の1月1日において、20才以上
・贈与年の合計所得金額が、2,000万円以下(※)、など
適用可能な住宅・日本国内にある住宅用家屋、
・家屋床面積が50㎡以上240㎡未満(※)、など
非課税限度額最大1,500万円まで
(新築等の契約が令和2年4月1日から令和3年12月31日の間で、消費税率10%)
そのほかの要件等・資金(おカネ)の贈与であること、
・適用を受けるためには、贈与を受けた翌年の3月15日までに申告すること、
・暦年(贈与)課税、相続時精算課税との併用可、など

※ 令和3年度税制改正により、令和3年1月1日以降の住宅取得資金等の贈与については、贈与年分の合計取得金額が1,000万円以下であるときは、家屋床面積の要件は「40㎡以上240㎡未満」と下限が緩和。

「新築」時の、「居住時期」要件

今年5月に国税庁が作成したリーフレット「『住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税』等のあらまし」に、次のように記されています。

1)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて住宅用家屋の「新築」等をし、かつ、

2)贈与を受けた年の翌年3月15日までにその「新築」等した家屋に居住すること 又は 同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込めること(ただし、贈与の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、この特例の適用なし)

※:上記リーフレットのP.3の ”受贈者等の要件”の「6」と「8」を、一部編集のうえ、結合。

言い換えますと、

.贈与の翌年3月15日までに、家屋の「新築」が完成、かつ、居住を開始、または、

.「翌年3月15日までに、居住できていない」ときも、その後遅滞なく、その「新築」した家屋への居住(ただし、同年末までに居住していないときは、適用なし。修正申告が必要)が確実と見込まれるとき、

が、「居住時期」要件を満たすことになります。

前者「1」「新築」の意味合いは、翌年3月15日にて居住を始めていますから、文字通り「新築工事が完了し、家屋を引き渡す」を指します。

これに対し、後者「2」「新築」は、いかがでしょうか?
この「翌年3月15日までに、居住できていない」ケースにおいて、「『新築』した家屋」とは、どのような状態を指すのでしょうか?

「新築」とは? ⇒「棟上げ」以降の状態を指す

「新築」…、日常用語ですね。が、本特例においては、とても大切なキーワードです。

上記の国税庁「リーフレット」の別ページに、この「新築」の範囲について注記されています。
具体的に、見てみましょう。

「新築」には、贈与を受けた年の翌年3月15日において屋根(その骨組みを含みます。)を有し土地に定着した 建造物として認められる時以後の状態にあるものが含まれます。

上記リーフレットのP.5の 、”(1)新築又は取得の場合の要件”の(注1)。


意味合いとしては、家屋の新築工事が遅延したときの「例外(救済)規定」的に、

翌年3月15日までに、屋根を有し、土地に定着した建造物として認められる状態、つまり、「棟上げ(上棟)」まで完了していれば、「新築」に含める

と定められています。

一方、これは裏返しますと

翌年の3月15日の時点で、工事遅延などにより「棟上げ」まで至っていないとき(もちろん、入居はできていません)

は、例え一日の遅れであったとしても、本特例は適用されないこととなります。

入居のタイミングだけに目がいき、「着工時期の遅れ等から、翌年3月15日までに完成・入居できていなくとも、年末までに住み始めれば、特例は使えるのでしょ?」と捉えるのは、正しくありません。

新築工事が「棟上げ」程度まで進捗して初めて、年末までの入居は認められるのです。

なお、マンションや建売住宅などの「取得」は、このような例外規定はなく、翌年3月15日までの引渡しが必須です(後日、改めて解説します)。

ちなみに、令和2年度確定申告にて、この特例適用の申告のご依頼を受けた方(床面積、約120㎡の注文住宅)の場合、令和2年8月に着工され、「棟上げ」は令和3年1月下旬でした。

まとめ

「住宅資金等資金の贈与税の非課税」の特例は、メリットが多いです。

が、一方、「非課税特例を受けられる!」と見込み、マイホームの資金計画を組んだ後に、何らかの要因による工事遅延等から「適用NG!」となると、ダメージは深刻です。

本年において、贈与、あるいは、新築工事の契約締結や着工の時期が遅れれば遅れるほど、翌年3月15日までの「棟上げ」が間に合わないリスクは高くなります。

また、次に述べますが、確定申告の要添付書類には、ハウスメーカー等による記入・押印が必要なものがあります。
確定申告期限に間に合うよう、余裕あるスケジュリングをお勧めします。

贈与税の確定申告書への、要添付書類

代表的なものは、以下となります。

そのうち、本日とりあげた、「新築」および「翌年3月15日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であること」についての「証明書」や「確約書」(⑥と⑦)については、国税庁ホームページに掲載の記載例をリンク付けしてあります。

いずれも、ハウスメーカー等による記入・押印が必要です。

①受贈者の戸籍の謄本
②非課税の適用を受ける住宅用家屋の登記事項証明書
③「新築」や「取得」にかかる契約書等の写し
④合計所得金額が、原則2,000万円以下であることを明らかにする書類
⑤省エネ等住宅の場合は、指定確認検査機関等が発行する性能証明書等
住宅用家屋が新築に準ずる状態にあることの「証明書」(なお、工事完了予定日等の記載は必須)
新築工事等が完了していない場合の「確約書」(完成後遅滞なく住むこと、居住開始予定時期などを約す)、など。

※相続・贈与税や個人税務等についてスポット「税務」相談を行っています。⇒ こちらへ

【関連のブログ記事】

♯2: 「取得」のときは、「来年3月15日までの『引渡し』は大丈夫か?」をチェック

♯3:わたしは「住宅資金贈与の非課税」を受けられるのか? ~10のチェック項目

♯4:本年4月15日迄に新居へ入居できなかった方へ。要提出書類は残っていませんか?

以上