本年3月16日以降の独立開業に伴い、青色申告をお考えの方へ … この3月15日が、手続期限になるケースに ご注意を
わたくしは、ほぼ一年前の2021年1月31日で勤務先を退社、ひとり税理士としての正式スタートを切りました(副業としては、2020年12月に開始開始)。
ただ、一般的には、会社員に区切りをつけ、フリーランスとしての活動開始を予定されている方におかれては、開業日を、
・多くの企業の事業年度末日である、3月末/4月1日、
・あるいは、株主総会が終わる、6月末/7月1日、
などを中心に考えられている方も少なくないでしょう。
一方、フリーランスで活動していくで、切り離せないのが、確定申告。
そして、税制の特典(※)が得られる青色申告。
(※)最大65万円を所得金額から差し引ける、認められる必要経費の範囲がひろがる、など。
税務署に対して、定められた承認申請手続をとることにより、青色申告のメリットを利用できます。
しかし、その手続きの提出期限については、留意点があります。
目次(Table of contents)
税務署に備え付けのパンフには、「開業の日から2カ月以内」との記述が
以下は、わたくしの手元にある、国税庁のチラシ「暮らしの税情報・令和2年版:㉓個人事業を始めたとき 法人を設立したとき」の抜粋です。
(国税庁HP上の「令和3年版・暮らしの税情報」も、同様の記述です)
左側・青枠部分「青色申告で申告したい人」の、右側・青枠部分「提出期限」の枠内の下線(赤字)部分をご覧ください。
所得税の「青色申告承認申請書」の提出期限は、
①「開業の日が1月16日以降の場合は、開業の日から2カ月以内」、ふ~ん。
② 2022年も、今日は2月1日で、「1月16日以降」。
③ 自分は「4月1日」を開業日とするので、「青色申告承認申請書」の提出期限は、『開業日から2カ月以内』の6月1日か…
と、解釈しそうになります。
ただ、この「開業の日の2カ月以内」を、そのまま、額面通りに、受け取ることは禁物です。
前年以前に、規模が小さくとも、不動産賃貸業や個人事業などを営んでいれば、「3月15日」が期限
すべての人が、「開業日から2カ月以内」とは なりません
結論から申し上げます。
「開業の日から2カ月以内」の前に書いてある、「開業の日が1月16日以内の場合」とは、
- その年の1月16日前までに、
- 以下の三つの所得が得られる、何れの業務も行っていないものが、
・不動産所得 ‥アパートやマンション、駐車場などを人に貸すことによる所得
・事業所得 ‥各種のサービス業など、自らのビジネスによる所得
・山林所得 ‥山林の伐採や譲渡による所得 - 1月16日以降、まったく新たに業務を開始した場合、
を指します。
ちなみに、「青色申告承認申請書」の提出期限は、法令ベースでは、以下のようになっています。
下の区分の「その年1月16日以降、新たに業務を開始した場合」が、上記「1」~「3」の場合です。
これに該当しないときは、原則的な考えの「その年3月15日まで」となるのです。
区分 | 申請期限 |
原則 | その年3月15日まで |
その年1月16日以降、新たに業務を開始した場合 | その業務を開始した日から2カ月以内 |
具体的ケース
文字による説明が、続いてしまいました。
おわかりにくかったかもしれません。
以下のような、会社員Aさんを考えてみましょう。
Aさんは、
- 前年以前から、小規模ながら、親から相続した駐車場からの賃料収入がある(不動産賃貸業を営んでいる)、
- そうしたなか、本年3月31日に勤務先を退社し、翌4月1日より、コンサルティング業の独立開業、
を準備中。
そして、Aさんは、「本年より、特典が得られる青色申告を利用したい」と考えています。
青色申告の提出期限は、いつになるのでしょうか?
答えは、「本年(その年)3月15日」になります。
以下のイメージ図をご覧ください。
Aさんは、小規模ながらも、不動産所得を得られる業務を、前年以前から行っています。
したがって、「新たに業務を開始」に該当しません。
(国からすれば、「前年から”商売”を手がけてきたのだから、3月15日までに、青色申告の承認申請書を出してよ」というスタンス)
提出期限を「開始した日(開業日)から2月以内」と考えるのは、誤りになります。
仮に、Aさんが、4月1日に、所轄税務署長に「青色申告承認申請書」を提出されても、承認はおりません。
(1日おくれの3月16日でも、NGです。青色申告のために、ほぼ1年、待たねばなりません)
2022年分の所得税については、白色申告となり、残念な状況になってしまいます。
むすび
本日も、最後までお読みいただきありがとうございました。
本年中に、会社員からフリーランスに転じようと考えておられる方の中には、以前より不動産収入などを得られている方が、必ずおられるでしょう。
その方にとっての青色申告の手続きの期限は、「2022年3月15日」です。
言い方を変えますと、前年から、不動産収入などがあり、白色申告をされている方が、青色申告に切り替えようとするときは、「青色申告をしようとしている年の3月15日」が期限となります。
・令和3年分の確定申告に気を取られる、
・または、「その年3月15日」となる場合があることをご存知ないまま、
期限「その年3月15日(本年3月15日)」をうっかり逃さないよう、ご注意ください。