税理士登録に必要な「実務経験」には、銀行での貸付業務なども認められる。「職務概要説明書」への記載内容がポイント。

12月17日(金)は、税理士試験の官報合格の日でした。

晴れて官報合格された方、おめでとうございます!

さっそく、税理士登録に向けての準備に着手されつつある方もおられるでしょう。

一方、税理士(会計)事務所以外で働きながら、税理士試験に合格された人のなかには、税理士登録するに必要な2年以上の「実務経験」の「定義」などについて、判断に迷う、疑問を感じてられる方はおられませんか?

さらに、東京税理士会のHPを見ますと、申請登録手続きについては「新型コロナウイルス感染拡大防止のため、現在、お手続きは郵便での提出のみ対応受け付けております。」とのお知らせが‥。

これを見ますと、コロナウイルス禍、「実務経験」に係るお悩みや疑問をクリアーにしていくのは、容易ではありません。

本記事は、そのような判断に迷う・疑問をお持ちの方などを念頭に置いたものです。

今から2年前の2020年1月、税理士事務所勤務ゼロのわたくしが、東京税理士会・会員登録課に問い合わせつつ、登録した経験をベースに記します。
(当時は、新型コロナウイルスの感染拡大前のため、対面での提出だけでなく、事前相談の機会も設けられていました)

ご参考になるところが少しでもあれば、幸いです。

※ 注意:2021年12月時点で、日本税理士会連合会のHPを見る限り、登録要件などは変わっていません。が、実際の申請登録手続きに際しては、提出先の税理士会に電話問い合わせ等のうえ、詳細をご確認くださいますようお願いいたします。

税理士登録の「実務経験」について‥「手引き」の記載は曖昧(あいまい)

ご存知の通り、税理士試験に合格しただけでは、税理士になれません。

通算して2年以上の「実務経験」が必要になります。

それでは、「実務経験」とは?

日本税理士会連合会が発行する「税理士登録の手引き」は、法令をベースに、以下のように記しています。

租税(税務)に関する事務


または

会計に関する事務で、貸借対照表勘定及び損益勘定を設けて計理する会計に関するもの(特別の判断を要しない機械的事務を除く。

さらに、「特別な判断を要しない機械的事務に該当しない会計に関する事務」の例示として、税理士法通達ベースにて、以下の6つを掲げています。

(1)簿記上の取引について、簿記の原則に従い取引仕訳を行う事務

(2)仕訳帳等から各勘定への転記事務

(3)元帳を整理し、日計表又は月計表を作成して、その記録の正否を判断する事務

(4)決算手続に関する事務

(5)財務諸表の作成に関する事務

(6)帳簿組織を立案し、又は原始記録と帳簿記入の事項とを照合点検する事務

イメージ的には、一般企業の内部決算を扱う経理部門あるいは事業部で管理会計を扱うセクションなどの仕事でしょうか。

ただ、上記の6つの記載は、あくまで例示。

さらに、銀行や、一般企業の財務あるいは管理系の業務には、会計に関連している仕事は結構あります。

そうした仕事に従事している申請者からすれば、上記の法令および通達の記述は、あいまいに映ります。

そこで、わたくしは‥、
①モヤモヤしても仕方ない。

②「実務経験」のリアリティは、その人ごと異なる。

自らの会計にかかる職歴(※)を詳しめに記したメモをベースに、「実務経験」に該当するのかどうか、会員登録課の担当官からご助言いただくしかない、
と考え、2020年1月、東京税理士会へ出向くことにしました。

※:銀行での28年、事業会社・財務部での3年

原則、銀行の貸付業務は「会計に関する事務」に該当、「実務経験」に含めること可能

結論から述べます。

ご対応いただいた会員登録の担当官は、「原則、銀行の貸付・融資業務(以下、貸付業務)は、『会計に関する事務』に該当すると扱う」と明言されていました。

その理由は、以下です。

①銀行の貸付業務は、銀行の得意先の業務および財産に関する帳簿書類・税務申告書などの内容に基づいて審査判断を下す。

②そのため、相当の会計的な知識・経験が要求される。

③ゆえに、原則、「会計に関する事務」に該当する。

ただ、入行直後の配属店での貸付業務等は、「『会計に関する事務』に該当せず」と判断される可能性あり

ただ、この”原則”が注意点でもあり、その担当官は‥、

①貸付業務といっても、銀行全体の業務フロー全体においては、さまざまなセクションや、多数の人が介在する。

②(税理士会は)個人により、銀行ラインにおいて要求される専門性や責任の軽重などに差があることを承知している。

③一例をあげる。入行直後の配属店での貸付・融資課業務に従事する方などは、失礼ながら、「『相当の会計的な知識・経験』を持ち合わせている」とは見なしがたい。

④最終的には、勤務先の代表者が署名および押印する「職務概要説明書」(※)の内容詳細を見て、判断する、
職務概要説明書」は、後ほど説明します

とも述べられました。

また、伝統的な「外まわり」ないし「渉外業務」に従事している行員についても、きびしめな見方をされていました。

「貸付稟議書を”書き起こし”されるているもしれない。しかし、その稟議書は貸付担当課長などのチェックを受け、最終の貸付判断は、支店長あるいは本部の審査・融資部門でしょ?」と。

一方で、銀行としての貸付判断を実質的にサポートしている業務は、「会計に関する事務」に該当する可能性あり

一方で、担当官は、

①「審査部」や「融資部」など貸付業務をつかさどる本店の部署などでなくとも、銀行組織としての貸付判断を実質的にサポートする業務に従事している行員は、「会計に関する事務」に該当する可能性あり。

②的確な融資判断をくだすに足る「相当の会計的な知識・経験を有する」と、みられるため。

③ただ、最終的には、(これまた)勤務先の代表者が署名および押印する「職務概要説明書」の内容詳細を見て判断する、

とも言及されていました。

「職務概要説明書」とは?

以下、日本税理士会連合会HPに掲載の「税理士登録の手引き」の抜粋です。

「職務概要説明書」の提出が必要な人。そして、書き方

目的は、上記①の下線部(赤字)の通り、「実務期間の証明に関し(中略)実務経験期間の判断のために提出を求める」です。

書式は自由で、わたくしは、東京税理士会で入手した登録申請にかかる「手引き」や要提出書類一式集にとじ込まれていた雛型に従いました。

所属した部署ごとに、
・職位
・期間
・職務(内容。会計業務とその他の業務の従事割合(割合を、必ず明記))
を時系列に記し、

最後の所属部署の続きに、
・”以上、会計に関する業務期間は、あわせて@@カ月”
と、まとめます。

そして、そのあとの末尾は、勤務先の証明部分となります。

以下の事項の記載および勤務先代表者の捺印とともに、その印鑑登録証明書の添付をもって、完了です。
・”上記記載に相違ありません。”
・証明日
・法人名・住所・代表者名

<以下は、ご参考>

わたくしの場合、これまでお伝えした担当官のアドバイスを念頭に、

①銀行本部の審査部門‥1年2カ月(かけ目 100%)、
②同じく、融資部門‥1年6カ月(かけ目 100%)、
③同じく、事業調査部門‥5年9カ月(かけ目 50%(注1))、

以上①~③につき「会計に関する業務期間、あわせ 66.5か月(注2)」として、「職務概要説明書」を準備・提出しました。

(注1)お客様の信用調査、個別貸出案件のチェック業務などにかかる時間的ウエートの見積り。

(注2)1年2カ月(①)×100%+1年6カ月(②)×100%+5年9カ月(③)×50%=66.5か月

なお、この「手引き」には書かれていませんが、税理士会の担当官は「銀行や一般企業の勤務経験から『実務経験』を認めてもらおうとする申請者は、その勤務先にかかる『職務概要説明書』の提出は必須」とおっしゃっていました。

「組織図」も、「職務概要説明書」とセットで要提出

「組織図」は、「実務経験期間」だけをカバーしていれば、足ります

なお、勤務先が保存期限の観点などから組織図を保管していないときは、申請者が作成したものを代用できます。

ただ、申請者による作成・代用については、税理士会から以下の指示を受けました。

実務経験期間」に算入した仕事にかかる所属部署名は、必ず記載すること。

②かつ、申請者作成の「組織図」が真正であることを明らかにすべく、その「組織図」余白部分に、勤務先の代表者の署名および捺印をもらうこと。

当然かもしれませんが、「実経験期間」にかかるだけに厳格です。

一般企業の財務部門の仕事は?

担当官は、やりとりの中で、

①自社株買いや子会社株式売却などの資本政策にかかる実務、

②経費精算実務、

③売掛金の回収や資金繰り管理、

などの企業・財務部門での業務も、「会計に関する事務」に該当する可能性はあるな…と言及。

ただ、わたくしのケースでは、銀行時代だけで「通算2年以上の実務経験」をクリアーする目途がつきました。

そのためか、担当官より「むしろ、事業会社・財務部での業務を言及しない方が、(税理士登録の)正式審査上、わかりやすい」とのアドバイスもいただいたことから、事業会社勤務時代の仕事について さらに質問することは控えました。

むすび ‥ 疑問あり、また、判断に迷われるときは、税理士会に問い合わせましょう

今日も、最後までお読みいただきありがとうございました。

銀行や、一般企業での経理・財務・管理系の仕事の内容は、本当に、人それぞれです。

疑問や心配をおもち、あるいは、判断に迷われるときは、まずは、電話などでコンタクトなさってください。

(2020年1月当時、面談でなくとも、「FAX、それに続けての電話ベースで、疑問点へ回答あるいは事前チェックしますよ」とおっしゃっていました)

おどろくほど、きめ細かく、かつ、親身に対応してもらえます。