隣地との境界確認などの手がかり(その2)‥相続財産調査(高齢者の財産管理) ③

本日は、敷地境界線の確認などの手がかりとなる二つ目の資料として、「建築計画概要書」について記します。

なお、記載内容は、近年、ご自宅を建築された方などにおかれては、ご存知のことがほとんどと存じます。

ただ、この記事は、
①「空き家」になっている不動産を売りたいものの、隣地との境界が不明な方、
②ご自身や身近な方が有する不動産の相続税対策や有効活用を検討中ながら、家を建てたときの資料が一切残っていない方、
などを念頭に、『建築確認概要書は、どのような局面で役に立つのか?』をお伝えすること主目的としています。

あらかじめ、ご了承ください。

「建築計画概要書」とは?

建築確認の申請時に、その申請添付して、市区町村に提出する書面です。

ちなみに、建築確認の申請は、建築予定の建物ごとに、市区町村などが建築基準法等の定めを守っているか否かを事前にチェックする手続です。

そして、建築基準法は、建築物の売買にあたって、善意の買主が無確認建築物(違反建物)を購入することにより不測の損害を被ることを防止するとともに、建物を建てる際に起こりうる周辺とのトラブルを防ぐ観点などから、「建築計画概要書」の閲覧制度定めています

つまり、「建築計画概要書」は、高齢となった父母などが建築当時の関係書類を保管していなくとも、子ども世代の方が閲覧、あるいは、写しの交付を受けることができます。
(より正確には、原則、誰でも閲覧・写しの交付請求は可能です)

次に、「建築計画概要書」の書式は、役所や年代によって異なてきますが、主な記載内容は以下です。
① 建築主、設計者や工事施工者の氏名および所在地など、
② 建築場所、敷地・建築・のべ床の各面積、道路との接道状況など建物物の概要、
(以下は、京都市HPに掲載の「建築計画概要書」の見本からです)


③ その建築物の位置や配置などの図面、
(同じく、京都市HPに掲載の「建築計画概要書」の見本からです)

なお、以下は参考までに、建物を建築するときの流れ(概要)をフロー図にしたものです。

役所の、どの部署が窓口? ~ どの部署で、閲覧、あるいは、写しの交付を受けることができるのか ~

市区町村によって呼び名は変わるものの、「建築指導課」が一般的と思われます。

これに対し、
①前回のブログで説明した土地区画整理事業等にかかる図面は、「区画整理課」ないし「市街地整備課」、
②次々回のブログで掲載予定の道路関係の書面は、「道路課」ないし「道路明示課」、
などです。

同じ役所でも、窓口となる部署は異なります。

最後に、閲覧方法ですが、私が調べた限り、インターネットでの閲覧等が可能な市区町村はないようです。

「建築確認概要書」が、役に立つ局面

主なものを、三つ記します。

敷地境界線の確認の手がかり

先に添付した「配置図」(京都市建築指導課作成の見本より)を、再掲します。

上部に、隣地境界線が描かれています。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 211125_建築計画概要書_配置図.png

この見本では、隣地との間隔は空いていますが、建物密集地で土地の奥行きが測定不可能なケースなどにおいても、境界線を知る手がかりとなります。

そのほか、道路との接道状況を含め、敷地の状況が把握できます。

その不動産の売却のとき、買主との折衝などがスムーズに進む

買い主は、その建物法令を遵守した物件である(違法建築でない)こと等が、ひと目でわかります

「建築計画概要書」は、先に述べたように、役所や年代によって様式は異なりますが、ほとんどのものには、
・建築基準法に適合していた旨を証する「確認済証」
・工事完成後の「完了検査」
などの履歴も掲載されています。

相続税申告や、生前対策の検討などの際にも役立つ

冒頭に記しましたが、「建築計画概要書」は、建築予定の建物ごとに作成されます。

やや専門的になるのですが、このことは、相続税における土地の評価ルール、すなわち、「原則、いわゆる『筆』に関係なく、『利用単位ごとに』評価する」に、とてもフィットします。

例えば、建築主が、その所有する一筆の「土地」のうえに、「自宅」と「賃貸用アパート」を建てているケースを考えてみましょう。

それぞれの敷地は、評価上、どのように分ければよいのでしょうか?

相続税の計算において、原則、土地は、いわゆる「筆」には関係なく、「利用単位ごと」に評価します。

上記のイメージ例では、「自宅」と「賃貸用アパート」に区分して土地の評価を行います。

その際、「自宅」と「賃貸用アパート」それぞれの敷地部分は、通常、「建築計画概要書」「配置図」などに拠ります

なぜなら、「建築計画概要書」は「配置図」を含め、建築基準法令にのっとり「建築物ごと」に作成されているため、相続税評価においても、これに従って評価するのが最も合理的だからです。

今回の、私の調査のてん末‥役所の「詳細資料の保存期限の壁」にぶつかる

前回の「土地区画整理事業等にかかる図面」と同様に、「詳細資料の保存期限の壁」にあたりました。

京都市建築指導課におもむき、職員の方のアドバイスを受けながら、検索端末を操作したのですが、残っていた資料は、以下の「建築確認等受付カード」のみ‥。

「配置図」含めて「建築計画概要書」は、保管されていませんでした。

ちなみに、京都市の場合、「受付日ベースで平成5年4月1日以降のものは、原則「建築計画概要書」も保管されている」とのことでした。

また、文京区のHPによれば、文京区では、「建築計画概要書」平成元年4月1日以降に確認申請のあったものが保管されており、閲覧等の対象になっています。

むすび

今日も、最後までお読みいただきありがとうございました。

自宅や収益物件などの不動産の重要書類については、本来は、当初だけでなく、後々の世代まで、大切に引き継がれることが望ましいです。

とはいえ、資産を継承された方の健康や、そのほかの事情により、月日が過ぎるなか、見当たらなくなるケースも少なくないと思います。

そのときは、役所の保管年限の制限を受けますが、「建築計画概要書」の閲覧等を検討されることもお考え下さい。

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