隣地との境界確認などの手がかり(その1)‥相続財産調査(高齢者の財産管理) ②

相続財産調査や高齢者の財産管理についての第二弾として、本日より四回連続で、私が先日に行った、叔父所有の「空き家」の隣地との境界などについての調査作業を題材に記します。

以前のブログにも書きましたが、叔父は、視覚障害に起因する特別障害者で、京都市内の老人ホームに入居しています。

その叔父が姉より相続した土地・家屋(京都市左京区上高野)は、長らく、「空き家」で、
隣地との境界標は、見当たらず
②叔父の手もとに、隣地との境界確定の手がかりとなる書類は、一切、残っていない、
③加齢もあり、叔父の隣地境界に関する記憶もあいまい
などの問題を抱えています。

そこで、将来の相続、あるいは、その不動産の有効活用や売却に備えるべく、土地の隣地境界や寸法などについて、
①自宅の東京より、インターネット経由で、できる限りの資料を取り寄せ(いわゆる「机上調査」)、
②現地の京都にて、①の机上調査では入手不可能な資料の収集(いわゆる「役所調査」)
などを行いました

ネット経由、あるいは、現地で入手しようとした主要資料は以下で、本日は、②の「土地区画整理事業等に関する図面」について記します。
①登記全部事項証明書(土地・建物)
土地区画整理事業等に関する図面(画地確定図など)、
③建築計画概要書、
④登記上の「建物図面」、
⑤道路区域決定図(道路台帳)、
(次回は③の「建築計画概要書」、次々回は④の「登記上の『建物図面』」、次々次回は⑤の「道路区域決定図」について掲載予定)

郷里にある「空き家」の境界や寸法などにつきお悩みの方にとって、少しでも役立つところがあれば幸いです。

〇 京都市左京区洛北にある「圓光寺」の紅葉です。

土地区画整理事業とは?

土地区画整理事業とは、都市計画区域内の土地について、計画的な、公共施設の整備改善および宅地の利用促進を図るため、市町村などが地権者調整・連携しつつ、
道路の拡幅(狭あいな区画道路や、行き止まり道の解消等)、
公共施設(道路、公園、水路等)の整備
③①や②により、整然とした、市街地の造成
などを行う事業です。

以下の、私の叔父宅の「登記事項証明書(土地)」(※)の表題部をご覧ください。
「登記情報提供サービス」を用い、インターネット経由で取得


土地区画整理事業区域内に位置し、換地処分を受けていることがわかります。

別途、京都市のHP(担当部署:市街地整備課)をチェックし判明したのですが、この土地区画整理事業は「洛北第一地区土地区画整理事業(以下、洛北第一)」と呼ばれ、昭和41年3月に事業決定したもの。

ちなみに、この「洛北第一」エリアは、昭和40年ごろ、田んぼや畑が相当に広がっていたのですが、地球温暖化防止のための国際協定「京都議定書」の会議場ともなった「国立国際会議場」の完成と、その周囲の都市計画路の整備により、急速に市街化したエリアです
(そうは言っても、今も、畑等は点在しますが…)。

土地の評価上、土地区画整理事業区内の宅地は、それ以外の宅地と比べ、何が異なる?

私は、「机上調査」の段階で、
①上記の、土地区画整理事業区域内に位置する旨の登記全部事項証明書、
②続けて、京都市のHPに、この土地区画整理事業が「洛北第一」として実存していたこと、
を確認したとき、「良かった!」と思わず叫びました。

なぜなら、自治体は、土地区画整理事業を行うにあたり、その区画内で、綿密な測量を行うからです。

高精度の測量図面がないと、地権者に対し、
・従前の宅地を造成・整形化し、
・新たに宅地を交付すること(換地処分)
などは、不可能ですよね。

そして、それら測量情報(注1)については、
土地の各辺の長さなどが記され、
・基本的に、地積測量図(注2)のかわりになる、
と解されています。

(注1)具体的な成果物は、画地確定図・出来形確認測量図、等。「○○市 画地確定図」などと、インターネット検索いただくくと、確認できます。
(注2)土地の登記に付随して法務局に備えられる図面。その土地の形状や地積などが記されています。

したがって、叔父のケースでも、私は「それら作成データの開示を受ければ、隣地境界についての有力な手掛かりになる!」と考えたわけです。

以下は、やや、今日の本筋から外れます(ご参考情報です)。

登記事項証明書や登記簿謄本記載の面積(以下、登記地積)は、往々にして、精密に測量した土地面積と合致しません。
(相続税評価において、特に、地価単価が高いエリアでは、登記地積の正確性は、土地の評価額、ひいては、相続税額計算に大きな影響を及ぼします)

ただ、土地区画整理の換地処分が行われた土地、そのほか以下の土地などについては、その地積は正確、信頼性は高いとされています。

土地区画整理の換地処分が行われた土地
→ ただし、制作時期が古いものには、精度が劣るケースもあります。
国土調査により、地積更正が行われた土地
分筆された土地
→ 分筆の対象となる土地のみ、測量および求積(残る片方の土地は、全体の登記地積から引き算で求めるため、正確性は劣る)。
平成17年3月以降に分筆が行われた元の土地(いわゆる「残地」)
→ 法令の改正により、平成17年3月以降は、分筆後のすべての土地について求積などが必要になりました。

今回の、私の調査のてん末‥役所の「詳細資料の保存期限の壁」にぶつかる

追加情報を得ようと、京都市HPの探索を続けましたが、思わぬ壁にぶつかってしましました。

画地確定図などの交付申請の対象に、この「洛北第一」が入っていないのです。

京都市のHP上、「問い合わ先」と記されていた京都市・市街地整備課に電話で確認したところ、「ご期待に沿えません。個別測量図などを保存しているのは、換地処分日の時期ベースで、平成9年以降の事業のみ」との返答が‥。

つまり、昭和55年に換地処分が行われた「洛北第一」の個別資料は、もはや存在しないのです(先月末に、「ダメもと」で京都市役所に赴いたときも、同じ解答)。

ご参考までに、残っているのは、以下の「換地総合図」のみ。

洛北第一_換地総合図

各土地の寸法は、記載されていません。
(他の都道府県でも、土地区画整理事業の実施時期が相当に古いときは、同様の模様です)

むすび

私の叔父の場合、事業実施年度が古いため、画地確定図などの土地区画整理事業等にかかる図面は保存されていませんでした。

ただ、これを裏返すと事業実施年度が新しいものになればなるほど各測量資料が保存・閲覧できる可能性は高くなります

ご自身、あるいは、ご親族所有の物件で、土地の寸法・隣地境界や面積が気になる物件があるときは、
まずはその土地は、土地区画整理事業エリア内の土地か?
②そうであったとしたら、画地確定図などの詳細が、インターネットあるいは担当窓口(※)から入手できないか
チェックされることをおすすめします。

(※)市区町村によって呼び名は変わりますが、市街地整備課あるいは区画整理課などです

繰り返しになりますが、土地区画整理事業で作成される測量図などは、
①土地の各辺の長さなどが記載され、
②とくに、製作時期が新しいものは、制度が高く、
③地積測量図の代わりになる、
ためです。

今日も、最後までお読みいただきありがとうございました。

次回は、「建築計画概要書」について記します。

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